バクテリオクロロフィルの吸収スペクトル[ab-sorption spectrum of bacteriochlorophyll]

  バクテリオクロロフィルには,バクテリオクロリン骨格を有するバクテリオクロロフィルa, b, gとクロリン骨格を有するバクテリオクロロフィル c, d, eとがある.後者については,クロロフィルの吸収スペクトルの項を参照.天然界では中心金属マグネシウム(亜鉛のこともある)に対して,バクテリオクロリン環面に対して垂直方向(アキシャル位)に1つだけ配位子を有する5配位型で存在する.その5配位型の単量体における吸収スペクトルは, 750~800 nm 付近に大きなQy帯と550~600 nm 付近に中程度のQx帯と350~400 nm 付近に大きなソーレー帯とがある.バクテリオクロリン骨格を有するバクテリオクロロフィルのQy帯は,クロリン骨格を有するクロロフィルのQy帯よりも長波長シフトしており,近赤外領域に達している.一方,ソーレー帯は近紫外領域が主である.このために,可視領域にはQx帯を除いて大きな吸収帯はなく,単量体の色調は薄い赤色を示すことが多い.
 環状の共役π電子系に直接置換している官能基の影響によって,その吸収帯はシフトする.まわりに存在する溶媒やタンパク質によっても吸収帯はシフトする.さらに,近傍にバクテリオクロロフィル分子が存在すると,励起子相互作用によって,Qy帯が大きく長波長側ヘシフトする.[[LH2]]のB850やLH1のB875や細菌型反応中心の*スペシャルペアークロロフィルなどがそれにあたる.バクテリオクロリン骨格のバクテリオクロロフィルa(b)のQx帯は,クロリン骨格のクロロフィルa(b)のQx帯よりも大きく明瞭であるために,バクテリオクロロフィルa(b)を多数含む光捕集アンテナや反応中心のような色素タンパク複合体において,選択的な光励起やエネルギー・電子授受体の同定に用いられることもある.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:58