フィコビリソームのコア(フィコビリソームコア構造)から放射状に配置されている棒状の部分構造(ロッドという).代表的なフィコビリソームの場合,6本のロッドがコアから半円盤状に放射していることが確認される.シアノバクテリアの場合,棒状の部分構造は,通常幾つかのドーナツ状をしたフィコシアニン六量体のドーナツ状円盤(ディスクという)が,それらの穴が連続するようにフィコビリソームリンカータンパク質を媒介にして2〜3個積み重なって形成されている.このロッドのコア側のディスクはリンカータンパク質との相互作用で長波長にシフトしている.一方、ロッドの先端側のディスクは短波長型のフィコシアニン六量体やフィコエリスロシアニン六量体、フィコエリスリン六量体など、種に依存して異なっているが、どの場合もコアに接するフィコシアニンディスクより短波長吸収特性(=より高エネルギーを吸収できる)をもっている.補色馴化では、緑色光照射で、この先端部のフィコエリスリンのディスク2個分が赤色光誘導性のフィコシアニンディスクを置き換えることで、より効率的に緑色光を吸収できるロッドをつくることができる.
一方、海洋性のシアノバクテリアや紅藻の場合,同じような六量体ディスクの連結の仕方で,コア側からまず幾つかのフィコシアニン六量体が,さらにその外側に幾つかのⅠ型フィコエリスリン六量体、さらに末端側にⅡ型フィコエリスリンが連なる.これらのフィコエリスリンには,緑色光を吸収するフィコエリスロビリンだけでなく、青緑色光を吸収するフィコウロビリンも結合しており、フィコシアニンにもフィコエリスロビリンを一部結合している.さらにこれらの六量体間をつなぐリンカータンパク質にもフィコエリスロビリンなどのビリン色素を結合するものがある.なかでも色素結合性のγサブユニット(α,βサブユニットとは異なり,他のフィコビリタンパク質ではみられない固有のリンカーサブユニット)がよく知られているが、他のリンカータンパク質にも色素結合性のものが知られている.このようなロッドを連結する色素結合性リンカータンパク質は上記の淡水性シアノバクテリアのシンプルなロッドでは見られない特徴である.