極性脂質のうち極性部分として糖を含む脂質.一般的に光合成生物には膜脂質中に高い含量で存在する.光合成生物に広く分布している糖脂質として,モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG), ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)などのガラクト脂質,スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)のような硫脂質,モノグルコシルセラミドなどの糖セラミドがある.高等植物の色素体,とりわけ葉緑体チラコイド膜や内包膜においては,MGDG,DGDG,SQDGがそれぞれ約50%,30%,10%程度の割合で含まれており,膜を構成する脂質のほとんどが糖脂質で占められている.また,このような葉緑体のチラコイド膜の脂質組成はシアノバクテリアのチラコイド膜や細胞膜の組成と非常によく似ており,シアノバクテリアが高等植物葉緑体の起源であるとする細胞内共生説を支持する一つの重要な根拠となっている. MGDG, DGDGなどの糖脂質はチラコイド膜の形成や光合成の機能に重要な役割を担っていると考えられている.糖脂質の合成は糖セラミド以外すべて色素体で行われる.一方,モノグルコシルセラミドなどの糖セラミドは細胞膜や液胞膜の主要な糖脂質であり,その合成は小胞体で行われる.