植物とシアノバクテリアの光化学系Ⅰ反応中心複合体は,チラコイド膜上にあり,光化学系Ⅱから供給される電子でNADP+を還元する.好熱性シアノバクテリアの光化学系Ⅰ反応中心構造が2001年にX線結晶解析で明らかにされた.中核部分はPsaA/PsaBの2つのよく似たポリペプチドのヘテロ二量体から成り,その膜面の上下をPsaC, D, E, F,膜内周囲をPsaI, K, L, Xなどの膜貫通ポリペプチドが取り巻く大型複合体である.95分子のクロロフィルa, 22分子のカロテノイド,2分子のフィロキノン,3つの4Fe-4S型鉄-硫黄センターを内部にもち,3分子のホスファチジルグリセロール,1分子のモノガラクトシルジアシルグリセロールが結合する.
周囲を取り巻くクロロフィルとカロテノイドはアンテナ色素として光エネルギーを捉え,中心部にある電子供与体P700(クロロフィルaとその立体異性体クロロフィルa'から成る二量体)にエネルギーを渡す. P700の左右に2分子のクロロフィルa,さらにその先にまた2分子のクロロフィルa単量体(一次電子受容体A0)が対称的に配置され,フィロキノン(Qk,あるいはA1, 鉄硫黄クラスターX(FX(A2)),さらに外部タンパク質PsaC内の鉄硫黄クラスターA, B (FA,FB)へと電子が流れ,フェレドキシン-NADPオキシドレダクターゼ(FNR)の働きで外部の電子受容タンパク質フェレドキシンに伝えられ, NADP+を還元する.光酸化されたP700は外部の水溶性タンパク質プラストシアニン(種によってはシトクロムc6)で再還元される.アンテナクロロフィルは同じクロロフィルaであるが,全体として光化学系Ⅱよりもより長波長に吸収帯と蛍光帯を示す.結合クロロフィルの種類や数は異なるが,この構造は緑色硫黄細菌とヘリオバクテリアのもつ光化学系Ⅰ型反応中心とほぼ共通と考えられる.