1956年にコック(Kok, B.)は,緑色植物に光を照射することにより700 nm 付近に吸収減少を示す色素が存在することを見いだし,これをP700 (Pigment-700の略)と名づけた.この変化を起こす色素は,陸上植物においては約300クロロフィルaに対して1分子の割合で存在する.酸化還元剤でも同様な吸収変化がみられることから,この変化は光エネルギーによるP700の酸化還元に由来すると推定された.現在ではP700は光化学系Ⅰの反応中心クロロフィル(一次電子供与体)であり,クロロフィルaとそのエピマーからなる二量体がその本体であることが判明している.P700の酸化に伴い,クロロフィル二量体の示す700 nm付近のブロードな吸収が消失し,690 nm付近に酸化型のP700に起因するシャープな吸収が出現することから,結果として680 nm付近と700 nm付近に吸収減少を示す.このほか、P700の酸化に伴って,青色部にソーレー帯に起因する435 nm付近の吸収減少,赤外領域には730 nm以上に幅の広い領域にクロロフィルカチオンラジカルの出現による吸収増大が見られる.これらの吸収変化は比較的容易に測定可能であるため,光化学系Ⅰ量の定量に利用される.