葉緑体ゲノムに保存された機能不明なタンパク質をコードする読み取り枠であるhypothetical chloroplast open reading frameの頭字語からycf4と名付けられた遺伝子.ycf4は酸素発生型光合成を行う陸上植物,藻類,シアノバクテリア(sll0226もしくはorf184)に保存されている.ycf4を欠損させると,光化学系Ⅰ複合体の蓄積が影響を受ける.シアノバクテリア(Synechocystis sp. PCC 6803)とタバコでは光化学系Ⅰ複合体が減少するが,光独立栄養生育は可能である.一方,クラミドモナスでは光化学系Ⅰ複合体は全く検出されず,光独立栄養生育はできない.したがって,生物種によって,Ycf4タンパク質は,光化学系Ⅰ複合体の合成には重要であるが必須ではない.Ycf4タンパクはN末側に2つの疎水領域(膜貫通ヘリックス)をもち,チラコイド膜に局在する.クラミドモナスでは新規に合成された光化学系Ⅰコア複合体(反応中心PsaA/PsaBの他にいくつかの低分子のサブユニットを含む)及びPSI-LHCI超複合体(LHCIを結合した光化学系Ⅰコア複合体)と一過的に結合し,大きな複合体を形成することで,PSI複合体の分子集合の初期から最終段階まで関与し,不安定なアセンブリ中間体を保護する役割を果たしていると考えられている.