光化学系Ⅰ複合体の中心部分を構成しているタンパク質. PsaAおよびPsaBと呼ばれる2つの相似のポリペプチドから構成される.両ポリペプチドとも750~800アミノ酸残基から成り,分子量8.2万~8.3万.アミノ酸配列は相互に約40%の相同性をもつ.両者はほぼ同じ立体構造をもつ.各々11個の膜貫通αヘリックス構造をもち,N末端より順にそれぞれa~k(PsaA)およびa'~k'(PsaB)と名づけられている.a~fおよびa'~f'の各膜貫通αヘリックスは主に周辺部に存在し,クロロフィルやカロテノイドなどのアンテナ色素の大部分を結合している.これらの6つの膜貫通αヘリックスの配置は,光化学系Ⅱのコアアンテナ複合体のCP47とCP43の6つの膜貫通αヘリックスの配置とよく似ている.一方,g~kおよびg'~k'の各膜貫通αヘリックスは中心部を構成している.後者の膜貫通αヘリックスを含むドメインは,その外側に約25分子のクロロフィルaを結合し,その内側に光化学系Ⅰの初期電荷分離反応を担う電子伝達体(P700,A,A0,A1,FX)を結合している.この中心部の構造は光合成細菌(Lサブユニット,Mサブユニット)や光化学系Ⅱの反応中心タンパク質の構造(D1タンパク質,D2タンパク質)とよく似ている.したがって,光化学系Ⅰ複合体を構成するPsaAとPsaBの構造は,それぞれ光化学系Ⅱのコア複合体のD1-CP43とD2-CP47の構造と相同性が認められる.また,このタンパク質のルーメン側のループは,P700への水溶性電子供与体(プラストシアニンまたはシトクロムc6)を受け入れるポケットを形づくっている.