葉緑体に含まれる主要な脂質は糖脂質であり,とりわけ葉緑体膜を構成するチラコイド膜や葉緑体内包膜は,全脂質の90%程度がモノガラクトシルジアシルグリセロールやジガラクトシルジアシルグリセロール,スルホキノボシルジアシルグリセロールで占められる.これらの膜には多くの生物の生体膜に主要に存在するリン脂質の含量は少なく,唯一ホスファチジルグリセロールが10%程度含まれている.上記4種の膜脂質はわずかな例外を除き,すべての葉緑体,シアネレ,シアノバクテリアで保存されており,これらの光合成器官・生物が共通の起源を持つとする細胞内共生説を裏づける一つの重要な根拠となっている.この他に,葉緑体外包膜には30%程度のホスファチジルコリンが含まれる.また最近,微量に含まれるホスファチジルイノシトールが葉緑体分裂に関わることが明らかとなっている.