葉緑体遺伝子[chloroplast gene]

  葉緑体ゲノム上に存在する遺伝子.葉緑体内にDNAが存在することが明らかになって以来,組換えDNA技術による葉緑体遺伝子のクローン化か始められ, 1977年にトウモロコシのリボソームRNA遺伝子が葉緑体遺伝子として初めてクローン化された.その後,光合成系タンパク質遺伝子, tRNA遺伝子,遺伝情報系タンパク質遺伝子が各種の植物でクローン化された. 1986年にタバコゼニゴケで葉緑体ゲノムの全塩基配列が決定された.この結果,葉緑体タンパク質のアミノ酸配列とマッチする遺伝子を検索したり,未同定の遺伝子を破壊して表現型を調べることができるようになり,同定された葉緑体遺伝子の数が飛躍的に増えた.現在,タバコ葉緑体ゲノム上には114種の遺伝子が見つかっている.藻類の葉緑体ゲノムの構造が明らかになり,さらに多くの葉緑体遺伝子が見つかった.紅藻類には200種類以上の葉緑体遺伝子が存在している.
 葉緑体遺伝子は,大きくRNA遺伝子とタンパク質遺伝子に分けられる.タバコでは35種のRNA遺伝子と79種のタンパク質遺伝子が存在している.RNA遺伝子にはリボソームRNA遺伝子, tRNA遺伝子,その他のRNA遺伝子があり,タンパク質遺伝子は,光合成系遺伝子,遺伝情報系遺伝子とその他の遺伝子に大別される.その他の遺伝子の中には脂肪酸合成などの代謝に関わる遺伝子やタンパク質分解に関わる遺伝子などが含まれるが,陸上植物ではその数は非常に少ない.これに対して紅藻類では代謝系に関わる葉緑体遺伝子が20種類以上存在している.葉緑体遺伝子はシアノバクテリアの遺伝子と高い相同性を示し,類似の機能をもつ遺伝子がクラスターをなして存在し,それらが共転写されることなど,その配置や発現においても原核生物と共通の特徴を示しており,葉緑体遺伝子が細胞に共生したシアノバクテリアの遺伝子に由来するものであるということを強く支持している.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:07