他の生物の共生者となる藻類の総称.ふつう相利共生に限るが,必ずしもそれが明らかでない例もある.シアノバクテリア,紅藻,緑藻(広義),渦鞭毛藻,珪藻,ハプト藻などが共生藻となり,宿主はさまざまな原生生物(有孔虫,放散虫,繊毛虫など),菌類(地衣類),後生動物(海綿,サンゴ,ヒドラ,シャコガイ,ホヤなど),陸上植物(ツノゴケ、ソテツなど)などが知られる(表1).宿主による共生藻の特異性や,その依存度はさまざま.後生動物や原生生物の共生藻のうち,黄褐色のものは褐虫藻(zooxanthella),緑色のものはズークロレラ(zoochlorella)と総称されることがあるが,分類学的にはそれぞれ多様な藻類を含む.また地衣類の共生藻は特にフォトビオント(photobiont)ともよばれ,さらにそれがシアノバクテリアの場合はシアノビオント(cyanobiont),真核藻類はファイコビオント(phycobiont)と分ける場合がある.
地衣類のように細胞外共生する例とサンゴのように細胞内共生する例がある.従属栄養生物に共生する場合,共生藻は宿主に光合成産物を供給し,宿主から栄養塩や安定した環境を得ると考えられている.また光合成生物(一部の珪藻,ツノゴケ,ソテツなど)の共生藻は基本的にシアノバクテリアに限られており,宿主に窒素固定産物を供給することで利益を与えている.またシアノバクテリアと真核藻類が同一宿主に共存することがあり,窒素固定と有機物供給の分業を行っているものと考えられている(一部の地衣やサンゴ).
表1. さまざまな宿主と共生藻
宿主 | 共生藻 |
サンショウウオ | Oophila(緑藻) |
ホヤ | Prochloronなど(シアノバクテリア) |
Symsagittifera,Convolutaなど(無腸動物) | Tetraselmis(緑藻),Licmophora(珪藻),Amphidinium(渦鞭毛藻) |
Dalyella(扁形動物) | “Chlorella”(緑藻) |
シャコガイなど(軟体動物) | Symbiodinium(渦鞭毛藻),“Chlorella”(緑藻) |
サンゴ,ヒドラなど(刺胞動物) | Symbiodiniumなど(渦鞭毛藻),Chlorella,Auxenochlorella,Elliptochlorisなど(緑藻),シアノバクテリア |
海綿 | Synechococcus, Aphanocapsaなど(シアノバクテリア),Choricystis(緑藻),真正眼点藻,渦鞭毛藻 |
有孔虫 | Porphyridium(紅藻),Chlamydomonasなど(緑藻),Chrysochromulina(ハプト藻),Pelagodiniumなど(渦鞭毛藻),Nitzschiaなど(珪藻),シアノバクテリア |
放散虫 | Pelagodiniumなど(渦鞭毛藻),Chrysochromulina(ハプト藻),Tetraselmis(緑藻),Synechococcus(シアノバクテリア) |
Placocista(ケルコゾア) | Chlorella(緑藻) |
Archerella(ラビリンチュラ類) | Chlorella(緑藻) |
Ornithocercus, Noctiluca, など(渦鞭毛藻) | シアノバクテリア,“Pedinomonas”(緑藻) |
繊毛虫 | Chlorella,Micractinium,Coccomyxa,Choricystis(緑藻),Synechococcus(シアノバクテリア) |
Acanthocystis(有中心粒太陽虫) | Chlorella(緑藻) |
アメーバ類(アメーボゾア) | Chlorella(緑藻) |
地衣類(多くは子嚢菌) | Trebouxia, Trentepohliaなど(緑藻),シアノバクテリア |
Geosiohon(グロムス菌) | Nostoc(シアノバクテリア) |
Rhzosolenia, Hemiaulusなど(珪藻) | Richelia (シアノバクテリア) |
ツノゴケ類,一部の苔類 | Nostocなど(シアノバクテリア) |
アカウキクサ(シダ) | “Nostoc”(シアノバクテリア) |
ソテツ,グンネラ | Nostoc(シアノバクテリア) |