シアノバクテリアや紅藻の葉緑体の中にあるチラコイド膜の細胞質側(ストロマ側)に規則的に配列されている超分子会合体(高次のタンパク質会合体).基本的に光化学系Ⅱのアンテナとして機能するが,光化学系Ⅰのアンテナでもあるという説もある.代表的な形状は半円盤状で,扇を広げたときその中心部分がチラコイド膜に結合しているような様子で存在している.その扇の直径は50 nmにも及び,分子量は5,000 kDa を越える.中心部分はコア(フィコビリソームコア構造)と呼ばれ,チラコイド膜上で膜貫通型タンパク質複合体である光化学系Ⅱ反応中心と結合している.コアからはロッド(フィコビリソームロッド構造)と呼ばれる棒状の部分構造が,一般に6本,放射状に配置されている.
フィコビリソームの主な構成成分はフィコビリタンパク質で,それらは三量体をつくってドーナツ状をした構造体となる.さらにリンカーと呼ばれるタンパク質(フィコビリソームリンカータンパク質)を媒介として,中心の穴が連続するように幾つか結合し,コアやロッドの棒状の部分構造をつくる.コアを構成するフィコビリタンパク質はアロフィコシアニン,またロッドを構成するフィコビリタンパク質は内側からフィコシアニン,フィコエリスリンである.シアノバクテリアではフィコエリスリンをもたない種が多い.また,フィコエリスロシアニンと呼ばれるフィコビリタンパク質をもつ種もある.これら4種のフィコビリタンパク質は光捕集色素であるフィコビリンを結合している.その種類と数はフィコビリタンパク質により異なっており,反応中心部分に行くに従って吸収する光のエネルギーがより低くなるように構成されている.種によっては光などの環境条件に適応してロッドの長さやロッド構成の調節が行われる機能(補色適応)ももっている.フィコビリソームは,より多くの光を吸収したり,その吸収量を調節したり,さらにはそのエネルギーをロッド部分からコア部分を経由して光化学Ⅱ反応中心へ効率よく伝達できるように進化してきたものと考えられる.