フィコビリソームは,主にドーナツ状をしたフィコビリタンパク質の三量体もしくは六量体のディスク構造から形成されているが,これらの三量体もしくは六量体のディスクからフィコビリソームの構造をつくり上げるために,はたらくタンパク質を総称してフィコビリソームリンカータンパク質(リンカータンパク質、リンカーポリペプチドともいう)という.これらの多くは発色団を結合しない.ロッドを構成するフィコシアニン六量体間をつなぐロッドリンカータンパク質(LR、cpcC遺伝子がコード)、ロッドとコアをつなぐロッド-コアリンカータンパク質(LRCともいう、cpcG遺伝子がコード)、コアのアロフィコシアニン三量体をつなぐコアリンカータンパク質(LCともいう、apcC遺伝子がコード)、コアと膜をつなぐコア-膜リンカータンパク質(LCM、アンカータンパク質ともいう、apcE遺伝子がコード)、ロッドと膜をつなぐロッド-膜リンカータンパク質(cpcL遺伝子がコード)、ロッドの先端に位置する小型ロッドリンカータンパク質(ロッド終端リンカータンパク質ともいう、cpcD遺伝子がコード)などがよく知られている.また、フィコエリスリン六量体同士をつなぐロッドリンカータンパク質やフィコエリスリン六量体とフィコシアニン六量体をつなぐロッドリンカータンパク質などもある.これらの多くは発色団を結合しないが、アンカータンパク質はフィコシアノビリンを結合し、フィコエリスリンのロッドリンカータンパク質にも発色団を結合するものがある.
リンカータンパク質はフィコビリタンパク質の三量体構造や六量体のディスク構造を正しい位置に固定する役割だけでなく,フィコビリソーム内の発色団であるフィコビリンの光吸収特性にも影響を与えていて,吸収した光のエネルギーをロッド部分(フィコビリソームロッド構造)からコア部分(フィコビリソームコア構造)を経由して光化学系Ⅱ反応中心や光化学系Ⅰ反応中心へ効率よく伝達するために重要な役割を果たしていると考えられている.
フィコビリタンパク質がつくるドーナツ状の三量体もしくは六量体構造はロッドのものもコアのものもよく似ており、その内部に入りこむリンカータンパク質も互いによく似ている.これらは大きく2つのタイプに分かれる.1つ目は、約20kDaのドメインで、上記のロッドリンカータンパク質やロッドコアリンカータンパク質、コア-膜リンカータンパク質などに存在している.2つ目は、約9kDaのドメインで、ロッドリンカータンパク質やロッド終端リンカータンパク質、コアリンカータンパク質に存在している.つまり、ロッドリンカータンパク質はこの2つのドメインを併せもっているものが多いが、一方だけをもつものもある.そのため、これらは共通祖先から進化したと考えられている.