光合成反応中心の一次電子供与体は,2分子のクロロフィルまたはバクテリオクロロフィルより成り,この二量体(バクテリオ)クロロフィルをスペシャルペアと呼ぶ.光化学反応中心の型により異なったQv,吸収帯の波長を示し,バクテリオクロロフィルaより成る紅色細菌のP870, 緑色硫黄細菌のP840,バクテリオクロロフィルgより成るヘリオバクテリアのP798, クロロフィルaより成る光化学系ⅠのP700, 光化学系ⅡのP680などのように,そのおよその吸収ピークの波長で表記される.結晶構造が得られている紅色細菌の光化学反応中心や光化学系Ⅰ,光化学系Ⅱでは,スペシャルペアは,2分子の(バクテリオ)クロロフィルが平行に向き合い,環の一部が重なり合っている構造をとっている.いずれのスペシャルペアの場合でも,それぞれの(バクテリオ)クロロフィルの中心Mgイオンには,外側から別々のタンパク質サブユニットのヒスチジン側鎖が配位していると考えられている.
スペシャルペアでは直接の光吸収,あるいは光捕集色素からの励起エネルギー移動により励起一重項状態が形成される.最低励起一重項状態へ緩和した後,数ピコ秒から数十ピコ秒内に電荷分離反応を起こし,フェオフィチンやクロロフィルなどの一次電子受容体に電子を渡して,自らは酸化されラジカルカチオンとなる.このように,スペシャルペアは光合成反応中心において光エネルギーまたは励起エネルギーを電気エネルギーに変換する重要な役割を担っている.