葉緑体とシアノバクテリアが持つ主要キノンで,イソプレノイド鎖をもつプレニルキノン.緑色植物ではクロロフィルの約1/10量含まれている.プラストキノン(PQ)A, B, Cなどが知られる.プレニル単位のどれか1つに水酸基が付いたものがPQC,その水酸基に脂肪酸がエステル結合したものがPQBで,その結合位置よって異なる異性体が知られている.酸化型は255~260 nm に吸収帯をもつ. PQAは2,3-dimethyl-6-multiprenyl-l,4-benzoquinoneであり,イソプレノイド鎖のプレニル単位の数が9, 4, 3のものが知られており,各々PQA-9(下の図を参照), PQA-4, PQA-3と表す. PQA-9 (プラストキノン9)が葉緑体に含まれるキノンの主成分である.PQA-9は光化学系Ⅱ複合体においてQAキノン電子受容体(QA)およびQBキノン電子受容体(QB)として働くほか,チラコイド膜中に10分子程度あるプラストキノンプールとしても機能している.QB部位に結合する酸化型PQが二電子還元されると,2つのH+を結合してプラストキノール(PQH2)となり, QB結合部位からチラコイド膜中に遊離し,プラストキノンプール中の酸化型PQと交換する.プラストキノールはシトクロムb6f複合体(プラストキノール-プラストシアニンオキシドレダクターゼ)に還元力を供給する.キノンは,一電子還元でセミキノンラジカル,2電子還元と2H+の結合でキノールに変換されるが, 酸化還元電位や反応様式はタンパク質内の結合部位での安定性やプロトン経路などで決まるため,同じPQでも結合部位により異なる性質を示す.たとえばQAは一電子還元のみを受けるが,QBは二電子還元されキノールになる.