原核光合成生物のうち,多くのシアノバクテリアは還元的ペントースリン酸回路を用いて炭素同化を行っているが,光合成細菌が用いる炭素同化系は多様である.紅色細菌は炭素同化に主として還元的ペントースリン酸回路を用いるが,紅色非硫黄細菌のRubisco欠損株における研究から,他の炭素同化系も働いていることが確認されている.紅色非硫黄細菌Rhodospirillum rubrumでは還元的TCA回路が機能していると報告されている.繊維状非酸素発生型光合成細菌のChloroflexus aurantiacusでは炭素同化系としてヒドロキシプロピオン酸回路が用いられているが,他の細菌においてはヒドロキシプロピオン酸回路ではなく還元的ペントースリン酸回路を用いている報告がある.緑色硫黄細菌は還元的TCA回路を利用する.緑色硫黄細菌においてはかつてRubisco活性が報告されていたが,Chlorobaculum tepidumのゲノム解析から存在が推察されたRubisco様タンパク質はRubisco活性をもたない別なタンパク質であることがわかった.ヘリオバクテリアではピルビン酸合成酵素,2-オキソグルタル酸合成酵素,ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ活性が確認されているが,還元的TCA回路を構成する鍵酵素の1つであるATPクエン酸リアーゼの存在が確認されておらず,還元的TCA回路として不完全であると報告されている.