カロテノイドの一種.褐藻類や珪藻類など不等毛植物の主要なカロテノイドで,ラフィド藻類や渦鞭毛植物の一部にもこれをもつものがある.これらの藻類の褐色はこの色素に由来し,これらの藻類では主にフコキサンチン-クロロフィルa/cタンパク質複合体(FCP)の構成要素として存在し,光合成の光捕集に働いている.フコキサンチンによって吸収された光エネルギーは90%以上の効率でクロロフィルaに直接転移されるが,この転移はフコキサンチンの吸収スペクトルに現れない赤色域の禁制遷移帯(S1)からクロロフィルaへの励起エネルギー移動によると考えられている.黄金色藻類やハプト植物ではヘキサノイルオキシフコキサンチンが,また黄緑色藻類ではブタノイルオキシフコキサンチンが光捕集に働いている.