フィトエンからリコペンまでは4段階の不飽和化を必要とする.紅色細菌のフィトエン不飽和化酵素(細菌型) (CrtI)はリコペンまで4段階の不飽和化を1種類の酵素で行う.例外的に紅色細菌Rhodobacterの酵素は3段階のニューロスポレンまでしか触媒できない.緑色糸状性細菌,ヘリオバクテリア,シアノバクテリアGloeobacter,細菌,菌類もこのタイプの酵素を持つ.一方,緑色硫黄細菌,シアノバクテリア(CrtP),陸上植物(PDS)のフィトエン不飽和化酵素(植物型)は2段階のζ-カロテンまでしか不飽和化できない.次にこれらの生物ではζ-カロテンをζ-カロテン不飽和化酵素(CrtQ,ZDS)によりリコペンまでの残りの2段階の不飽和化をする.植物のPDS, ZDSは還元力をプラスチド・ターミナルオキシダーゼ(PTOX)に渡す.ただしcrtP/pdsとcrtQ/zdsは互いに相同性があり,またcrtIとも部分的に相同性がある.CrtIはFAD,CrtPはNAD(P),CrtQはキノンを補酵素とする.CrtIはジフェニルアミンなど,CrtPはノルフルラゾンなどにより阻害される.さらに,反応中に生成するシス型のζ-カロテンはζ-カロテン異性化酵素(Z-ISO)によりトランス型に異性化する.陸上植物で調べられているが,詳細は判っていない.また,ζ-カロテン不飽和化酵素の反応に伴って生成するシス型あるいはポリシス型のニューロスポレンやリコペンは,シス-カロテン異性化酵素(CrtH, CrtISO)により全トランス型に異性化する.ただしこのトランス異性化は,非酵素的に光に依存してもおこなえる.フィトエン不飽和化酵素(細菌型) (CrtI)のばあいは,不飽和化反応の間にシス型フィトエンがトランス型ニューロスポレンに変化する.一部の紅色細菌とヘリオバクテリアを除くと,カロテノイドはリコペンから合成される.