光合成細菌の反応中心複合体に結合し,光酸化されたスペシャルペア(バクテリオ)クロロフィルの還元に働くシトクロム.紅色細菌および繊維状非酸素発生型光合成細菌にみられるものは基本的に4つのヘムcを結合している4ヘムシトクロムであるが,Rhodovulum属の種では例外的にヘムcを3つしかもたない.反応中心複合体を構成するサブユニットの一つであるが,一部の細菌ではこれを欠くものもあり,その存在意義は必ずしも明らかではない.タンパク質の長軸に沿って直線的に配置された4つのヘムのうち2つは+200~+400 mV の比較的高い酸化還元電位をもち,残り2つは-100~+150 mV の比較的低電位をもつ.スペシャルペアから最も離れた位置にある低電位ヘムがシトクロムc2などの水溶性の電子供与体から電子を受け取り,中間のヘムを経てスペシャルペアヘ電子を伝達すると考えられている.緑色硫黄細菌においては1分子のヘムcをもつシトクロムcz (PscC)が反応中心当たり2分子存在し,スペシャルペアの還元に働いているが,これは紅色細菌のものとは異なり,膜を貫通する疎水性領域をもつ.