土壌水分の減少に伴って植物がしおれ,水を与えないとしおれが回復しない程度に至ったときの土壌の水ポテンシャルを指す.永久しおれ点(永久萎凋点,permanent wilting point)ともいう.
鉢植えの植物に対して給水を停止すると,蒸散や蒸発によって鉢の中の土壌の含水率は低下し,主に土壌のマトリクスポテンシャルが低下することによって土壌の水ポテンシャルは低下する.それに伴って植物は水を吸収することが困難となり,吸水量が蒸散量より小さくなると,植物はしおれるようになる.このとき,しおれている植物を空気湿度が高く蒸散速度の小さい条件に移すとしおれが回復する.この程度のしおれを一時的しおれ(一時的萎凋)という.さらに土壌水分が低下すると,植物を空気湿度の高い条件に移しても水分が土壌に補給されない限りしおれは回復せず,永久しおれ(永久萎凋)に至る.永久しおれ点は,植物が永久しおれに至ったときの土壌の水ポテンシャルを指す.土壌中で植物が利用することができる水量は,フィールド容水量としおれ点における含水量との差である.フィールド容水量とは,土壌に水を与えた後,重力による水の下降が終わった直後の土壌の含水量を指す.
永久しおれ点はそれぞれの土壌に固有の値ではない.植物にとってしおれは細胞の膨圧を失うことなので,細胞の浸透ポテンシャルが低ければしおれる時の水ポテンシャルも低くなり,したがって永久しおれ点も低くなる.永久しおれ点は草本植物で-1.5 MPaから-2.0 MPaの間であり,多くの植物で-1.5 MPa付近である.したがって,永久しおれ点として-1.5 MPaが広く用いられている.
Kramer PJ, Boyer JS (1995) Water relations of plants and soils, Academic Press, California, P92.