エネルギー伝達阻害剤[energy-transfer inhibitor]

 葉緑体やミトコンドリアにおけるATP合成は,光化学反応や電子伝達反応の阻害(電子伝達阻害剤),光化学反応や電子伝達反応によって形成されたプロトンの電気化学的な勾配の解消(脱共役剤),およびATP合成酵素の活性の阻害(エネルギー伝達阻害剤)の3種類の方法で阻害される.高等植物の葉の白化をひき起こす菌類が産生する環状テトラペプチドであるテントキシンは,葉緑体ATP合成酵素のF1部分に特異的に結合して活性を阻害する.また,抗生物質であるオーロベルチンは,ミトコンドリアや細菌のATP合成酵素のF1部分に結合して,その活性を阻害する.一方,カルボキシル基の修飾試薬であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)は,Fo部分のH+輸送に直接関与するcサブユニットのグルタミン酸残基あるいはアスパラギン酸残基を修飾し,H+輸送を阻害することによってATP合成酵素の活性を阻害する.また,抗生物質であるオリゴマイシン(ミトコンドリアには作用するが葉緑体には作用しない)やベンチュリシジン(細菌に作用する)もFoを阻害することでATP合成酵素を阻害する.これらFoの阻害剤もエネルギー伝達阻害剤である.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:14