ゲル移動度シフト法[gel mobility shift assay]

 DNA結合タンパク質のDNA結合活性を測定する方法の一つ.ゲルシフト法またはEMSA (electrophoreticmobility shift assay)法とも呼ばれる.基本的には,プローブとなる標識DNA断片をDNA結合タンパク質を含む試料と混合し,ゲル電気泳動を行う.電気泳動の際には, DNAとタンパク質の複合体が解離しないよう,非変性条件はもちろんのこと,塩濃度, pH,温度などを適正に保つことが重要である.ふつう遊離のプローブDNAが速く移動し,タンパク質と結合したプローブDNAの移動度は低くなるので,遅れて移動するバンドを検出し,複合体形成の指標とする.
 検出方法は標識の方法により異なる.32Pなどで放射標識したグローブを用いた場合には,ゲルをそのままあるいは乾燥後,オートラジオグラフィーにより検出する.また, DIG (digoxygenin)などでラベルされたブローブを用いた場合には,泳動後にDNAをナイロンなどのフィルター膜に転写し,アルカリホスファターゼなどで標識した抗体を結合させ,最終的には,化学発光基質の分解による化学発光をX線フィルムに記録する.この方法は,精製していないDNA結合タンパク質にも適用できるため, DNA結合タンパク質を検出する最初の段階の実験でも利用できる.また, DNA結合タンパク質を精製する過程でのモニタリングにも利用される.さらに,既知の異なる濃度のプローブDNAのシリーズを用いてゲル移動度シフト実験を行い,プローブ濃度に対する複合体形成量をプロットすることにより, DNA結合タンパク質とプローブDNAとの解離定数を推定することができる.1対1で結合する場合,遊離プローブと結合プローブが等量となるプローブ濃度が解離定数を表す.さらに,プローブDNAとわずかに配列の異なる非標識DNAを共存させることにより,競合実験ができ,結合における配列特異性の評価ができる.結合認識配列は数塩基対であっても,結合実験で実際に使うプローブの長さは通常数十塩基対必要であることが多いが,このような場合であっても,認識配列部分を改変した競合分子を用いることにより,結合の特異性を調べることができる.


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Last-modified: 2020-06-16 (火) 20:57:51