トランスポゾン[transposon]

  転移によりゲノム上の新しい座位に挿入しうるDNA配列.転移因子(transposable element).転移の様式により,RNAを中間体として複製的に転移するクラスⅠのレトロトランスポゾンと, DNAの切り出し(脱離)と再挿入により転移するクラスⅡのDNA型トランスポゾンに大別される.狭義には,後者のみをトランスポゾンと呼ぶ.その他, RNAを中間体とせずDNAが複製的に転移するとされるローリングサークル型トランスポゾンと考えられる配列も存在する.レトロトランスポゾンは構造上の特徴からLTR(long terminal repeat)型と非LTR(non-LTR)型に分類され,さらに後者はLINE (long interspersed ele-ments)とSINE (short interspersed elements)に分類される.レトロトランスポゾンはトウモロコシのゲノム配列の50%以上を占めるなど,植物種によっては重要なゲノム構成要素となり,植物種間のゲノムサイズの違いを生じる主要因である.またトランスポゾンは,転移酵素遺伝子を内部にもち自律的に転移する自律性因子と,転移酵素を自律性因子から供給されることで転移する非自律性因子に分けられる.トランスポゾンによっては,挿入だけでなく,欠失,逆位,染色体切断などのゲノム再編成をひき起こす.これらの再編成は,近傍にある遺伝子の発現に影響を与えることがあり,特にDNA型トランスポゾンは挿入と脱離により色素生合成に関わる遺伝子などの発現を変化させ,絞りや斑入り模様形成の原因となる.さらに,葉緑体へのタンパク質の輸送に関わるトウモロコシのhcf106遺伝子などでは, DNA型トランスポゾンが脱離せずに斑入りを与える挿入変異も知られている.これはトランスポゾンのクロマチン構造やDNAのメチル化状態が体細胞レベルで変化し,近傍の遺伝子の発現に影響を及ぼすためと考えられている.近年では,トランスポゾンをランダムに転移させた植物体の大規模なプールを作製し,得られた遺伝子破壊株を利用して遺伝子単離を行う手法が確立し,植物の研究に盛んに用いられている.

関連項目


Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:30:22 (1721d)

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