植物細胞のリン脂質はグリセロリン脂質が主で,動物細胞のスフィンゴミエリンに代表されるようなスフィンゴリン脂質はほとんど知られていない.また,動物細胞の血小板活性化因子(1-O-アルキル-2-アセチル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン, PAF)のようにアルキル基がエーテル結合したタイプのリン脂質も知られていない.グリセロリン脂質としては,ホスファチジルコリン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルイノシトールが色素体以外の膜の主要なリン脂質である.ホスファチジルグリセロールは,プラスチド膜の主要なリン脂質であるほか,ミトコンドリアの内膜に含まれるカルジオリピンの前駆体としてミトコンドリア膜にも含まれる.ホスファチジルセリンは存在量は少ないが,ミクロソーム画分に含まれる.ホスファチジン酸は,単離した細胞膜や液胞画分に含まれることが知られている.