光電子増倍管[photomultiplier]

  光電子増倍管は紫外可視から近赤外領域において広く用いられている光電管光検出器であり,外部量子効果型検出器の代表例である.十分なエネルギーをもった光子が物質の表面に吸収されると,内部の電子は励起されて真空中に飛び出す.このような電子を光電子,電子放出面を光電面もしくは光陰極という.このような光電子放出現象を外部量子効果あるいは外部光電効果という.光電面より放出される光電子流は1W当たり数十mA程度であり,一般に分光測定で対象とする10-9W以下では10-12 A程度の電流となる.レコーダー,オシロスコープなどの上に意味のある情報として出力,記録するためには106程度の増幅が必要となる.そこで,光電流そのものを低雑音で増幅する二次電子増倍管が考案され,これを内蔵した光電管が光電子増倍管と呼ばれる.市販されている光電子増倍管は出力パルスの最小幅が10~20ナノ秒と比較的大きいが,二次電子軌道を収束させるための内部電界を発生する電極の構造をフォーカス型にしたものでは1~2ナノ秒となる.特に光電面を球面状とし,電子レンズ系に工夫をこらした超高速型やマルチチャネルプレートと呼ばれる特殊な二次電子増倍板を用いたものでは,パルスの立ち上がり時間が300ピコ秒以下のものが得られている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:55