地表は,氷河期の繰り返しによる寒冷化と温暖化を繰り返しているが,産業革命以降は,明らかに温度上昇を示している.特にハワイ島マウナロア山におけるCO2濃度の測定値は,夏期における減少(植物の光合成によるものと思われる)と冬期における増大を繰り返しながら,その平均値は, 1958年の測定開始以来継続的な増加を示し,地表における温度上昇を強烈に印象づけた.
地表面は,太陽からの日射エネルギーによって暖められる.暖められた地表面から赤外線が放射され,大気中の水蒸気やCO2に吸収される.その結果,地表近くにおける大気温度は上層部より高くなる.地表におけるこのような温度上昇は温室効果と呼ばれ,地球温暖化の原因として注目されている.また温室効果をひき起こす気体は温室効果ガスと呼ばれる.温室効果ガスにはCO2のほかに,メタン,一酸化窒素,クロロフルオロカーボン(フロン)などがある.
地球温暖化に関する国際的な検討に関しては“国連環境計画(UNEP)”が中心的な働きをしており,その下の“気候変動に関する政府間パネル(IPCC)”によって,多くの国から数百人の科学者の参加による,第三次評価報告書(The Third Assessment Reporton Climate Change)が, 2001年4月に承認された.その結果“地球の平均地上気温は,20世紀中に約0.6℃上昇した”ことが明らかとなった.また1990年代は,この1,000年間で最も暖かい10年間であったという.さらに,高層気象観測用ラジオゾンデが利用可能となった1950年代後期以降,高度8 kmまでの大気および地表温度は,ともに10年当たり0.1℃の上昇が認められている.気温上昇に伴って以下のような変化が地球上に認められた.
A) 1960年代後期以降,積雪面積の約10%が減少した可能性,および20世紀中に北半球の中・高緯度域の湖沼や河川が氷で覆われる年間日数が約2週間減った可能性がかなり高い.
B)20世紀に地球の平均海面水位は0.1~0.2 m上昇した.
C)エルニーニョ現象は, 1970年代中期以降,それ以前の100年と比べて,発現頻度,持続期間および強度が増大している.
D)20世紀(1900-1995)において厳しい干ばつあるいは著しい多雨が発生した陸上地域が若干増加した.
E)アジアおよびアフリカの一部において,干ばつの発現頻度と厳しさがここ数十年で増加した.
大気中のCO2濃度は, 1750年以降31%増加した.この値は,過去2万年間で例のない高い値である.過去20年間の人為的CO2排出の約3/4が化石燃料の燃焼によるものであり,残りの大部分は森林減少による.海洋と陸地によって吸収されているCO2は,人為的に排出されるCO2の約1/2である.この結果,過去20年間における大気中のCO2濃度の年増加率は約1.5 ppm (0.4%)に達した.大気中のメタン濃度は1750年以降1,060 ppb (151%)増加し,さらに増加を続けている.一方,大気中の一酸化二窒素濃度は, 1750年以降46 ppb (17%)増加し,現在も増加を続けている.このように,人間活動に伴って大気中の温室効果ガスの濃度は増加を続けている.
最近50年間に観測された温暖化のほとんどは人間活動に起因するものであり,21世紀を通じて人間活動が大気組成を変化させ続けるものと予想される.その結果,地球の平均気温と平均海面水位の上昇がもたらされる.予想される気温上昇率は20世紀に観測されたものよりはるかに大きく,過去10,000年間に観測されたことがないほどの大きさである可能性がかなり高い.地球の平均海面水位は1990年から2100年までに0.09~0.88m上昇すると予測される.
21世紀には,ほとんどすべての陸域で最高,最低気温がともに上昇し,暑い日の増加と寒い日,降霜日の減少をもたらす可能性が高い.一方,大部分の陸域で気温の日較差が縮小する可能性,および多くの地域で強い降水現象の増加が起こる可能性が強い.また,このような人為起源の気候変化は,今後何世紀にもわたって続くと見込まれる.たとえば,CO2は,排出によって増加した濃度のおよそ1/4が排出後数世紀にわたって大気中に残留する.また,深海が気候変化に適応する時間スケールが長いため,地球の平均地上気温の上昇と海洋の熱膨張による海面水位上昇は,温室効果ガスの濃度が安定したあとも数百年続くと予想されている.