光化学系Ⅱの酸素発生中心であるマンガンクラスターの構造を指す(下図参照).Mn4CaO5という構造式を持ち,3つのMnイオン,1つのCaイオンが4つの酸素原子によるオキソ結合で歪んだキュバン型構造を作り,その外側に4つ目のMn(Mn4)が2つのオキソ酸素によってキュバンに結びついている.さらにCaイオンとMn4にそれぞれ2つの水分子が配位しており,それらのうちの1つまたは2つが酸素発生の基質を提供している.この構造の歪みの原因は,Mn-Oの結合距離に違いがあること,及び典型的なMn-O結合よりもCa-Oの結合距離が長いことにある.特に5つのオキソ酸素のうち,O5と呼ばれる酸素とその両側にあるMn1, Mn4との距離が通常のMn-O結合よりも著しく長く,構造の歪みに寄与している.このことはまた,O5が周りの金属イオンとの結合が弱く,反応サイクル中にそれらの結合が切断されやすいことを示唆しており,従って,O5が酸素発生の反応部位であることを示唆している.