PPRタンパク質[PPR protein]

 PPRはpentatricopeptide repeatの略であり,35アミノ酸からなる保存性の低い繰り返し配列を指す.PPRタンパク質は,このPPRをタンデムに持つタンパク質であり,真核生物に特異的に存在し,シロイヌナズナのゲノムのin silico解析により,維管束植物のゲノムで非常に大きなファミリーを持つことが明らかになっている.シロイヌナズナでは,およそ450のメンバーが存在し,その多くはミトコンドリアあるいはプラスチドに局在すると考えられる.PPRタンパク質は,配列特異的RNA結合タンパク質であり,一つのPPRが一つの塩基を認識すると考えられている. PPRを構成するアミノ酸配列により,認識する塩基の選択制をおおまかに説明することが可能になっており(PPRコード),任意のRNAを認識するタンパク質をデザインすることが可能になりつつある.PPRタンパク質は,その構造により,PとPLSの二つのサブファミリーに分けられる.Pサブファミリーのメンバーは,PPRモチーフの単純な繰り返しから成る.標的RNAに結合し,RNAの末端をエクソヌクレアーゼから保護したり,翻訳開始点付近のRNAの二次構造を変更し,翻訳装置を呼び込むなどの機能が考えられている.一方,PLSサブファミリーは,PPRモチーフ(P)に加えて,それに関連したLおよびSモチーフをP-L-Sの繰り返し単位として持ち,さらにC末端にE,DYWモチーフを持つものが多い.これらのC末モチーフを持つメンバーは,RNAエディティングにおいて編集サイトの認識に必要なものが多い.E,DYWモチーフの機能はまだ証明されていないが,RNAエディティング反応を触媒するデアミナーゼではないかと考えられている.維管束植物において,RNAエディティングのサイトが非常に増加しているが,これはPPRタンパク質ファミリーの増大に関連するものと考えられている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:55