モノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼ[monodehydroascorbate reductase]

 EC 1.6.5.4. *NAD(P)Hを電子供与体としてモノデヒドロアスコルビン酸(MDA)ラジカルからアスコルビン酸(AsA)への還元を触媒する酵素,現在知られている唯一の有機ラジカルを基質とする酵素であり,フェノキシルラジカルも電子受容体とすることができる.植物の酵素は補欠分子族としてFADを含むが(E-FAD),アミノ酸配列は真核生物よりも原核生物のフラビン酵素との類似性のほうが高い,反応は下に示すピンポン機構で進む.
 E-FAD + NAD(P)H + H+→E-FADH2-NAD(P)+ (a)

 E-FADH2-NAD(P)+ + MDA →E-FAD・-NAD(P)+ + AsA + H+(b)  E-FAD・-NAD(P)+ + MDA + H+ →E-FAD + AsA + NAD(P)+ (c)  (a)式で表されるNADHによるFADの還元はチオール修飾試薬で阻害される.この反応速度は溶液中での拡散律速から予想されるものよりも速く(1.2×108 M-1S-1), (b)および(c)式の還元型FADによるMDAの還元速度も同程度である(2.5×108 M-1S-1).反応溶液中のイオン強度が上昇すると反応速度が低下することから,この高い反応速度は基質と酵素の間の静電的な作用で保証されていると思われる.植物細胞内には数種のアイソフォームが存在し,葉緑体ミトコンドリアペルオキシソームグリオキシソーム細胞膜アポプラストでその存在が確認されている.葉緑体内には10μM程度の濃度で含まれ,チラコイド膜表面に弱く結合し,water-waterサイクルでのアスコルビン酸再生に寄与する.また,モノデヒドロアスコルビン酸の濃度が十分低い場合は,メーラー反応の促進に寄与していると考えられる.

関連項目


トップ   編集 凍結解除 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:24