光合成電子伝達反応による電子の供給速度に比べて還元生成物のストロマでの消費速度が遅く,電子の供給が過剰になった状態を過還元という.たとえば低温や乾燥などの条件下ではCO2還元速度が低下するが,ここに強光が照射されるとNADPHが蓄積し,フェレドキシン,光化学系Ⅰの電子受容体FA,FB,FX,プラストキノンプール,光化学系ⅡのQA, QBキノン電子受容体などの還元比率が高くなる.過還元状態では光エネルギーの光合成への利用効率が著しく低下する結果,光化学系Ⅱ反応中心での電荷再結合による三重項クロロフィル生成とそれによる一重項酸素生成,および光化学系Ⅰでのスーパーオキシドラジカル生成が促進され,光阻害がもたらされる.過還元状態を緩和する分子機構として, (1)循環的電子伝達による過剰還元力の消費, (2)光呼吸による過剰還元力の消費とCO2(電子受容体)供給および(3)光化学系ⅡのΔpHによる効率低下制御による光エネルギー入力の抑制がある.