オレンジカロテノイドタンパク質[orange carotenoid protein]

オレンジカロテノイドタンパク質 [OCP: orange carotenoid protein]は水溶性カロテノイドタンパク質 の一種で、シアノバクテリアのアンテナであるフィコビリソームからの光励起エネルギーの熱散逸を引きおこす.シアノバクテリアに広く分布するが、フィコビリソームをもつ灰色藻や紅藻には見つかっていない.ケト型のカロテノイドを結合し、青色光により励起され、シアノバクテリアにおけるクロロフィル蛍光の非光化学的消光(non-photochemical quenching)を引きおこす.分子質量約35kDaのアポタンパク質に1分子のケト型カロテノイド(通常は3'-ヒドロキシエキネノン)を非共有結合する.この色素が青色光励起されると、その吸収が長波長シフトし、おそらくフィコビリソームのロッド膜リンカーポリペプチドApcEに結合して励起エネルギーを熱散逸すると考えられている.この非光化学的消光は強力で、フィコビリソームが吸収した励起エネルギーの30-40%を熱散逸させるというが、そのしくみはまだよくわかっていない.色素としては、エキネノンが結合しても同様の作用を示すが、ケト基をもたないゼアキサンチンを結合したものは、非光化学的消光の作用をもたない.
 不活型のオレンジカロテノイドタンパク質は476nmと496nmの吸収ピークと440nmの吸収の肩をもち、活性型は510nmの単独の吸収ピークをもつ.不活型から活性型への変換は、青色光の光強度に依存し、活性型から不活型への変換は暗所で進行する.不活型の結晶構造は決定されており、N末側のαヘリックスドメインとC末側のα/βドメインにまたがるように、ヒドロキシエキネノン分子がその内部に存在する.その結晶構造はプロテインデータバンクに登録されている(3MG1).
 活性型のオレンジカロテノイドタンパク質は、in vitroでは暗所ですみやかに不活型にもどるが、in vivoではその回復速度は遅い.この不活型への変換を促進する因子として、蛍光回復タンパク質(FRP: fluorescence recovery protein)と呼ばれる膜結合性の約14kDaのタンパク質が同定されている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:54