クランツ型葉構造[Kranz type leaf anatomy]

 C4植物の葉身に特徴的な解剖構造.C4植物の葉組織には,細胞内構造が発達した維管束鞘細胞維管束系を取り囲み,さらにその外側を1層の葉肉細胞が放射状に取り囲んでいる.葉の横断面を見たとき,このような光合成細胞の配列状態が花冠(花環,リース,ドイツ語でKranz)のように見えることから,クランツ型葉構造と呼ばれる.C4植物の葉身以外の葉組織(葉鞘,包葉など),C3植物の葉組織では,複数層の葉肉細胞が維管束鞘細胞を取り囲むとともに,維管束鞘細胞の細胞内構造も発達しておらず,これらの葉構造はクランツ型葉構造とは呼ばない.C4植物に特徴的なクランツ型葉構造は,C3植物からC4植物への進化過程で獲得され,これらの葉構造形成を制御する遺伝子発現制御系が機能していると考えられる.
 クランツ型葉構造の維管束鞘細胞には葉緑体,ミトコンドリアおよびペルオキシソームが多数存在し,非クランツ型葉構造の維管束鞘細胞とは異なる.さらに,維管束鞘細胞の葉緑体やミトコンドリアは,C4植物サブタイプにより特徴的な構造と細胞内配置を示す.イネ科C4植物の維管束鞘細胞の場合, NADP-ME型(トウモロコシ,ソルゴーなど)とPCK型(ギニアグラス,ローズグラスなど)では維管束鞘葉緑体は葉肉細胞側に偏在しており,遠心的配列と呼ばれる.一方, NAD-ME型(キビ,シコクビエなど)では維管束鞘葉緑体が維管束系側に偏在しており,求心的配列とよばれる.
 なお,C4植物の中にはオカヒジキのようにクランツ型葉構造をもたず,表皮の内側に2種類の光合成細胞が層状構造をなすものもある.

クランツ型葉構造_図2.png

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:29