シンクとソースの量的あるいは機能的なバランスのことをさす.植物を個体レベルでみると,ソース器官は光合成を行う葉にほぼ限られるのに対して,シンク器官は栄養成長期間においては新しく作られる葉・茎・根が,繁殖成長期間には種子や果実,地下茎などの貯蔵器官がある.ソース器官からの限られた光合成産物は,各シンク器官のシンク強度にしたがって分配されており,植物体中ではソース器官とシンク器官の量的・機能的なバランス関係が適切に調節されている.こうしたシンク-ソースバランスは農作物の生産場面でも重要な意味をもつ.たとえば,トマトやメロン,果樹などの生産で広く行われる摘果(摘花)は個体としてシンク能に対するソース能の割合を相対的に高めて,シンク(この場合は果実)の量を犠牲にして個々のシンクの大きさや質の増大,向上を図っている.また,イネやコムギなどの多くの作物の収穫指数(子実収量/全乾物重量)は今日までの約100年間で1.5倍程度向上し,アブラナ科のダイコンやヒユ科のテンサイにおいても,貯蔵器官のサイズが増加した.これはより大きなシンクをもつ品種・系統が選抜されるとともに,大きなシンク能を支えうるだけのソース能をもつように育種的あるいは耕種的に改良された結果であるといえる.