バイオ燃料[biofuel] †
生物が生産する物質(バイオマス)を原料にして生産される燃料の総称。植物や藻類など光合成生物を原料とするバイオ燃料には,バイオエタノール,バイオガス,バイオディーゼル燃料,バイオジェット燃料がある。いずれも,内燃機関などの動力を動かす化石燃料に替わるエネルギー源として期待されている。
- バイオエタノール
バイオエタノールは,アルコール発酵によって得られるエタノールを主とする。デンプンや糖蜜などを原料とする従来の醸造技術による生産方法と,セルロースなど難分解性グルカンを酵素分解して糖化したものを原料とする方法の2つに大別できる。前者についてはすでに産業化され,代替ガソリン自動車用燃料として期待される一方で,トウモロコシなどの穀物価格の高騰を招く一因となっている。
- バイオガス
バイオガスは,微生物機能を利用して合成されるガスの総称であり,メタン発酵により合成されるメタンや,光合成反応や酵素機能を利用した水素をいう。メタン発酵は,下水汚泥や食品廃棄物など多様な有機物を利用できるうえ,比較的簡便な設備で行うことができるため,有機廃棄物の有効利用や途上国の安価な燃料生産法として利用されている。光合成反応や酵素機能を利用した水素生産には,光化学系タンパク質複合体や合成色素を利用した人工光合成,ヒドロゲナーゼやニトロゲナーゼの酵素活性を利用したものがある。いずれも,現在検討されている光触媒反応による人工光合成に比べて,太陽エネルギーの変換効率が大きくない。
- バイオディーゼル燃料
バイオディーゼル燃料は,植物や藻類,動物の油脂を原料として,主にディーゼルエンジンへの利用を対象として作られる燃料である。原料となる植物由来の油脂には,コーン油,大豆油,ひまわり油,ココナッツ油,パーム油,菜種油など多様なものが用いられる。これらの植物油からバイオディーゼル燃料を作る方法には,主にアルカリ触媒法(湿式洗浄法)が用いられる。この方法は,水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどアルカリ触媒存在下でメタノールと反応させてエステル化し,生成するグリセリンを除いて得られる脂肪酸メチルエステルを燃料とする方法である。すでに,工業プロセスとして完成されており,一定の品質が確保できるため,廃油からの燃料生産法として用いられている。植物油の使用は,食糧との競合が懸念されるため,より油脂生産速度の高い微細藻類によるバイオディーゼル燃料生産が注目されている。
- バイオジェット燃料
バイオジェット燃料は,バイオディーゼル燃料と同様に,植物や藻類,動物の油脂あるいは炭化水素を主な原料として,ジェットエンジンあるいはガスタービンを対象に作られる燃料である。植物油を水素処理,水素化分解して,炭素鎖の短い軽油や灯油相当の炭化水素を得る方法である。様々な植物油やユーグレナなどの藻類からの生産が期待されている。