マンガン除去[Mn depletion]

  酸素発生系の触媒であるマンガンクラスターは,4個のマンガン原子から成り,光化学系Ⅱ反応中心タンパク質に配位していると考えられている.マンガンクラスターは, (1)弱アルカリ下のトリス処理, (2)数mM程度のヒドロキシルアミンによる処理, (3)中高温(35から50℃)への曝露,4)低pHあるいは高pHへの曝露など,により破壊され,結合部位から除去される.マンガンの除去処理に伴って,光化学系Ⅱ表在性タンパク質である33 kDaタンパク質18(16) kDaタンパク質24 (23) kDaタンパク質も光化学系Ⅱ複合体から遊離する.マンガン除去の処理方法の違いによって遊離するタンパク質が異なる.たとえば,トリス処理では3種の光化学系Ⅱ表在性タンパク質が,またヒドロキシルアミン処理では18(16) kDaタンパク質と24(23) kDaタンパク質が遊離する.アスコルビン酸やヒドロキノンといった低分子還元剤は,光化学系Ⅱ表在性タンパク質が光化学系Ⅱ複合体に結合しているときはマンガンを除去できないが,1 M CaCl2 などでこれら表在性タンパク質を遊離させると,容易にマンガンを除去できる.
 表在性タンパク質とマンガンの遊離はほぼ同時に起こるが,表在性タンパク質の遊離がマンガン除去に先行して起こると考えられる.これらの還元剤によるマンガンの遊離過程をEXAFS(広域X線吸収微細構造)やEPRで調べた結果によると,4個のマンガンの価数が(Ⅱ, Ⅱ, Ⅳ, Ⅳ)であるS-1といった過還元S状態がまず生成し,さらにS-2 (Ⅱ, Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)からS-3 (Ⅱ, Ⅱ,Ⅲ,Ⅲ)へと還元が進み,マンガンクラスターの分解と光化学系Ⅱタンパク質複合体からの遊離が起こる. S-3状態は,光活性化反応で最初に生成するマンガンクラスターに類似した構造をもつと想像されている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:46