光合成反応の最終電子受容体である二酸化炭素(CO2)が十分供給されないと,光合成反応は停止し,細胞はストレスを受ける.集光性クロロフィルによって受容された過剰な光エネルギーは,炭素同化反応で消費できず,一部は蛍光や熱として放出されるが,残りのエネルギーによって酸素分子が還元されて活性酸素種が生じ,光化学系などの細胞構成成分が損傷を受ける.またRubiscoの副反応であるオキシゲナーゼ反応によって生じたグリコール酸は,光呼吸によって還元力を消費しつつCO2を生成する.強光・乾燥条件で光合成を行うC4植物・CAM植物や, CO2濃度の低い水中で光合成を行う藻類などの水生光合成生物では,CO2欠乏ストレスに適応馴化するために,無機炭素(CO2または重炭酸イオン)を能動的に生体内へ取り込む機構(C4回路.無機炭素濃縮機構)が発達した.CO2欠乏環境下で誘導されるCO2輸送体ならびに重炭酸イオンABC輸送体がシアノバクテリアで知られている.シアノバクテリアではカルボキシソームが,緑藻ではピレノイドがCO2欠乏ストレスで発達する.光合成生物が受けるCO2欠乏ストレスの程度は,絶対的なCO2分圧によって決まるのではなく,酸素分圧との比やその時点での光強度に依存する.生物種によって値は異なるが,最適な光強度を越える光を受けると,結果的にCO2の供給が不足し,これが種々のストレスの原因となる.