光合成の効率[photosynthetic efficiency]

  光の物理エネルギーが光合成の段階を経るにつれてどの程度化学エネルギーとして固定されるか,光合成の部分反応がどの程度の効率で行われるかなどを示す際に用いられる.C3光合成を行う通常の緑葉では,約8個の光量子の吸収によって4個の電子が光化学系ⅡからⅠへと流れ,2個のNADPHおよび3~4個のATPが生成する.非循環的電子伝達のみでは,ATPの生産量が還元的ペントースリン酸回路と光呼吸を駆動には不足し、非循環的電子伝達に加えて光化学系Iの循環的電子伝達が必要であるとする説もある.
 光呼吸が起こらないCO2/O2濃度比が十分に高い条件では,これらの還元力とエネルギーのほとんどが還元的ペントースリン酸回路を駆動するために用いられる.還元的ペントースリン酸回路では,Rubiscoによって1個のCO2が固定されると, 1/3個のトリオースリン酸(TP)が生成し,リブロース1,5-ビスリン酸が再生される.これらの過程で2個のNADPHと3個のATPが消費される.
 光量子1 mol 当たり200 kJ mol-1のエネルギーをもつ波長600 nm (橙色)の光のもとで,これらの反応がすべて標準状態で行われると仮定しよう. ADP+Pi→ATP (ΔG'=30 kJ), NADP+ + H2O →NADPH+ H+ + O2G'=220 KJ), CO2+H2O+Pi→1/3 TP+O2G'=490 kJ)なので,ATPとNADPHを生産するチラコイド膜反応の効率は33~35%,還元的ペントースリン酸回路も含めた光合成全体効率は約30%となる.
 自然条件ではこの理想条件は実現しない.強光条件下では吸収したエネルギーの大部分は熱として散逸する.また,1 mol のO2がRubiscoに固定されることにより開始される光呼吸経路では,2 mol のNADPH, 3.5 mol のATP,それに1/6 mol TP が消費される(TP生産に必要な還元力とエネルギーを考慮すると,合計3 mol のNADPH, 5 mol のATPが消費され,0.5 mol のCO2が放出される計算となる).これらによってCO2固定の効率は著しく低下する.C4植物では光呼吸が抑えられるが,ホスホエノールピルビン酸の再生にエネルギーが使われるので,低温で湿潤な環境条件ではC3植物のほうが効率が高い.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:44