生態系内の生物が消費した自由エネルギーに対する,生物体に同化された自由エネルギーの割合.動物や微生物のように有機物から生物体を合成する場合,最大生産効率は50%程度である.植物が光エネルギーと無機物から生物体を合成する場合の最大生産効率は,炭水化物そのものが生物体であるとし,理想条件における光合成の量子収率から求めれば30%程度となる.しかし,自然の中で生きている生物によって最大生産効率が実現されることはほとんどない.たとえば多細胞の動物の場合,細胞の維持や運動のために多くの自由エネルギーが消費されてしまう.そのため,ヒト成人の生態学的効率はほぼゼロである.
陸上の高等植物の場合,大きくは次の3つの要因によって効率が低下する.第一に,炭水化物から核酸,タンパク質,脂質を合成し,さらにそれを細胞構造に組み込んでいく過程で構成呼吸によって自由エネルギーが失われる.第二に,できあがった細胞の維持呼吸と物質の輸送のためにかなりの自由エネルギーが費やされる.第三に,光合成そのものの効率が以下のような理由で野外では低下する.まず,光合成有効放射は太陽の放射エネルギーの約半分にすぎない.また,光強度が高いと光飽和によって量子収率は低下する.光呼吸によるエネルギー消費も大きい.さらに,水ストレスがかかると気孔開度が低下し二酸化炭素を効果的に取り込むことができなくなる.そのうえ,野外の気温変化は大きく,常に光合成に最適な葉温が実現されているわけではない.このような様々な制約のために,陸上生態系における高等植物の生態学的効率は太陽からの全放射量に対してせいぜい1%程度となっていることが多い.