色素体(plas-tid)は2重の膜で囲まれており,これらを併せて包膜と呼ぶ.外側の膜を外包膜(outer envelope),内側の膜を内包膜(inner envelope)と呼ぶ.内包膜と外包膜では,タンパク質や脂質の組成に大きな違いがある.これらの膜は,カロテノイドを含むため,精製包膜は黄色ないしオレンジ色に見えることが特徴である.代謝物質に対する主要なバリアーとしては内包膜が機能しており,様々な物質に対する輸送体や交換体が含まれている.包膜には,細胞核にコードされた色素体タンパク質前駆体を輸送する装置(translocon)が存在し,外包膜に存在する装置の成分はTocX,内包膜に存在する装置の成分はTicYなどと呼ばれる(X,Yはタンパク質の大きさがXkDa, Y kDa であることを示す数字).ガラクト脂質など葉緑体の脂質を合成する酵素のほか,カロテノイド合成,クロロフィル合成,ジベレリン前駆体などの一部のテルペノイド合成なども包膜で行われる.以前には,包膜の陥入によりチラコイドがつくられるように考えられたこともあったが,最近では,包膜からチラコイドに脂質やタンパク質を輸送する経路として,小胞が関与する経路の存在が明らかにされた.