カロテノイド[carotenoid]

 8個のイソプレノイド単位が直鎖状に結合した物質.両側の末端基は,光合成生物には鎖状(ψ(psi)末端基),環状(β(beta),ε(epsilon)末端基),芳香環状(φ(phi),χ(chi)末端基)がある.有機溶媒に可溶,水に不溶.黄・橙・赤・紫色を呈するが,共役数の少ないフィトエンとフィトフルエンは無色,ζ-カロテンは薄い黄色である.吸収極大波長は,共役二重結合の数が多くなると電子遷移エネルギーが低くなり,長波長シフトする.共役したβ末端基やカルボニル基の数,および溶媒にも依存して吸収スペクトルの形が変化する.共役系にケトカルボニル基 (>C=O) を持つカロテノイドは,水素結合性溶媒中で吸収が長波長シフトするとともにスペクトル形状が大きく変化する(代表的なスペクトルはカロテノイド類の吸収スペクトルに掲載).炭化水素のみのものをカロテン (carotene),また水酸基,カルボニル基,エポキシ基,メトキシ基などの形で酸素原子を含むものをキサントフィル (xanthophyll) と区別することもある.
 すべての光合成生物にバクテリオクロロフィルあるいはクロロフィルとともに存在し,生物分類ごとに固有のカロテノイドをもつ.陸上植物藻類では葉緑体で合成される.光合成系においては大部分のカロテノイドは(バクテリオ)クロロフィルとともにタンパク質複合体として存在しており,LHCIIペリジニン-クロロフィルaタンパク質複合体(PCP),LH2LH1光化学系Ⅰ反応中心光化学系Ⅱ反応中心紅色細菌光化学反応中心などの中でのカロテノイドの結合状態も明らかにされつつある.カロテノイドは,吸収した光エネルギーを(バクテリオ)クロロフィルに渡す光捕集機能を持ち,過剰な光による傷害を防ぐ光阻害防御機能であるキサントフィルサイクルをにない,また色素タンパク複合体の会合にも関与している.光捕集機能や光阻害防御機能は,カロテノイドの電子遷移エネルギーや励起状態寿命に依存するため,カロテノイドの機能とカロテノイドの共役構造が関連づけられて議論されている.
 一部の光合成生物の非光合成器官,非光合成細菌,菌類も固有なカロテノイドを生産できる.大部分の動物は食餌由来のカロテノイドを吸収・蓄積し,一部の動物はさらに酸化や還元をすることができる.視物質に含まれるレチナールは,β-カロテンなどがβ-カロテン・モノオキシダーゼにより分解されたものである.個々のカロテノイドの分布,性質,機能などはそれぞれの項目に,生合成はフィトエンの生合成リコペンの生合成カロテノイドの生合成の項目に記載してある.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:58