光合成におけるCO2の拡散をオームの法則と同型の数式として表現した光合成モデルで用いられた概念.1970年代までは二酸化炭素固定抵抗とほぼ同義に用いられたが,現在では,気孔付近の葉内細胞間隙から葉緑体までのCO2の拡散抵抗を示すことが多い。また,葉肉抵抗の逆数を葉肉コンダクタンスと示す。
光合成において,気孔から取り込まれたCO2は,細胞間隙を拡散によって移動し,葉肉細胞の細胞壁,細胞膜、細胞質を通って葉緑体に入り,Rubiscoによって固定される.このような葉内におけるCO2の拡散移動には,大きな物理抵抗が生じることが分かっている.特に、細胞壁から葉緑体内のストロマに達するまでの液相の抵抗は,同じ距離の気相の抵抗の104倍にもなる。葉肉抵抗は細胞壁の厚さや,葉肉細胞の内部表面積(葉肉表面積, Smes),葉緑体の細胞膜への密着面積(葉緑体表面積, Sc),アクアポリンやカルボニックアンヒドラーゼといったタンパク質の関与によって決定されているようであるが,実体はまだ明らかではない.
現在,主に3つの方法で葉肉抵抗を測定することが可能とされている。それらは炭素安定同位体法,A-Ci curveフィッティング法,クロロフィル蛍光法であり,いずれもガス交換法による光合成速度の測定が基本となっている.これらの測定法の中では、炭素安定同位体法が最も正確に葉肉抵抗や葉緑体内のCO2濃度を評価できると考えられている.