葉における蒸散によって根系から葉へ植物体の木部内をマスフローとして流れる水の移動を指す.
葉における蒸散によって,葉の水ポテンシャルが低下し,葉の木部導管内では,圧ポテンシャルが低下する.このとき、根付近の木部内の水との間に生じた圧ポテンシャル勾配を原動力として,茎や幹の木部導管内で液体の水がマスフローとして移動し蒸散流となる.
水は水素結合によって水分子どうしあるいは導管壁と強く結びつく力(凝集力)が非常に強い.水の凝集力によって水柱内部がたとえ負の圧力となっても容易に真空部分が発生しない.蒸散によって導管内の水柱が引っ張られると,水の凝集力によって負の圧力(張力)が生まれ、水が蒸散流として長距離を移動する.導管内の負の圧力は-1 MPaにもなることが確認されている.このように植物体内の水移動を,水の凝集力と張力によって説明する考え方を「凝集力と張力の理論」(Cohesion-Tension Theory)とよぶ.
Dixon HH, Joly J (1894) On the ascent of sap, Annals of Botany 8: 468-470.