電子トンネリング[electron tunneling]

  電子が,古典力学ではエネルギー的に許されない空間的な位置に,量子効果によって移動する現象.光合成では,電子移動で重要な役割を果たす.光合成色素間の電子移動を考えると,古典力学では,電子が色素に束縛された状態から真空に飛び出すエネルギーがなければ,エネルギー障壁を越えることができない.しかし,電子トンネリングでは,電子が真空に飛び出すエネルギーをもっていなくても,障壁を突き抜けて電子移動が起こる.電子トンネリングは電子移動の条件を与える.電子がトンネリングを起こすには, (1)トンネリングの前後でエネルギー準位が等しい, (2)核の位置と運動量がトンネリングの前後で変わらない(フランク-コンドンの原理),を満たさなければならない.したがって,反応体を取り囲むタンパク質や溶媒などの環境がゆらいで,上の条件を満たさなければ電子移動は起こらない.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:21