Rubiscoタンパク質がペプチドやアミノ酸に分解される過程を指す.Rubiscoは,葉の展開過程で葉の一生を通した全合成量の大部分が生合成され,そのプールは展開終了後の老化過程で徐々に分解されていき,枯死前にはほぼ全て消失する.窒素などの栄養欠乏や上位葉による被陰など葉の老化が促進される条件では,Rubisco分解も促進される.Rubiscoは酵素としての触媒能力の低さを補うため多量に生合成され,C3植物の成熟葉ではその量は単一タンパク質として可溶性タンパク質の約50%,全窒素の12~30%にも及ぶ.そのため,Rubiscoは窒素転流が起こる際の主要な窒素源となる.
Rubisco分解の機構には諸説がある.Rubisco分解は,葉の老化過程において葉緑体数の減少が起こる時期よりも早くから始まることから,Rubiscoは葉緑体プロテアーゼによって分解されるか,あるいは葉緑体から排出されて葉緑体外で分解されると考えられている.葉緑体プロテアーゼのなかで,ストロマに局在するアスパラギン酸プロテアーゼCND41は,変性Rubiscoに対する分解活性を持つことが示されている.また葉緑体外の機構としては,Rubisco-containing body (RCB)やsenescence-associated vacuole (SAV)などいくつかの経路が提唱されている.RCBは,葉緑体包膜に由来する二重膜を持ち,Rubiscoや他のストロマタンパク質を内包する直径1μm程度の小胞である.RCBは,オートファゴソームを介したマクロオートファジーの機構により,葉緑体から切り離され中央液胞に運ばれた後,液胞プロテアーゼによって分解される.一方,SAVは老化葉に特異に存在する,中央液胞よりもずっと小さな消化オルガネラである.SAVの内部は酸性でSAG12システインプロテアーゼなどが局在しており,Rubisco分解能を持つ.RubiscoのSAVへのターゲティング機構は不明である.