VIPP1 (Vesicle Inducing Protein in Plastid 1)はチラコイド膜の形成と維持に必要とされる主要な膜リモデリング分子で,光合成生物に普遍的に存在する.分子量は約32kDでαヘリックス構造を多くもち,膜貫通領域をもたないが,葉緑体では内包膜とチラコイド膜に結合することで2 MD以上の大きな複合体を形成する.シロイヌナズナではVIPP1をコードする遺伝子の欠損は致死となり,チラコイド膜が形成されず,包膜の維持にも異常が検出される.シアノバクテリアVIPP1ではリング構造をとるホモオリゴマーの構造が決定され,リングの内側に膜を結合させて湾曲させるはたらきや,in vitroで膜状に自己会合する性質が報告されている.VIPP1モノマーのフォールディングは,細胞質での多様な膜機能に関わるESCRT-IIIタンパク質,バクテリアで膜ストレス応答に関わるPspAタンパク質と類似しており,それらの構造と機能の共通性から,共通の祖先をもつ膜リモデリング分子に由来するESCRT-III/PspA/VIPP1タンパク質ファミリーの存在が認識されている.