ヘリオバクテリアはグラム陽性の光合成細菌であり,周辺集光装置はもたず,アンテナ色素としてはバクテリオクロロフィルgのみをもつ.その反応中心は光化学系Ⅰと同じ鉄硫黄クラスターをもつ反応中心タイプに分類される.酸素にきわめて不安定で,嫌気条件下においてのみ安定な精製標品を得ることができる.酸素存在下では電子伝達成分である鉄硫黄クラスターが破壊され、バクテリオクロロフィルgは酸化を受けて様々なクロロフィルa誘導体へと変化するのが原因である(反応中心標品の色調も褐色から鮮やかな緑色に変化する).複合体の構成サブユニットはpsh 遺伝子によりコードされ,コアタンパク質(PshA)とFA/FBタンパク質(PshB)が同定されているが.コアタンパク質はホモ二量体構造((PshA)2)を形成し,2回軸に沿って対称的な反応経路が存在するものと推測される.反応中心内の電子移動スキームは.
二次電子供与体(シトクロムc) → 一次電子供与体(P798) → 一次電子受容体(A0,81-OH-Chl a) → 二次電子受容体(A1,キノン)? → FX → FA/FB
と考えられている.緑色硫黄細菌型の反応中心と同じく,キノンの存在は不明である.一次電子受容体は,植物型のクロロフィル(81-OH-Chl a)であるのが特徴である.シトクロムcはpetJ遺伝子によりコードされ,N末端システイン残基に共有結合した脂肪酸により膜に結合している.このシトクロムcは隣接するシトクロムbc複合体から直接電子を受け取り, P798に電子を渡すことができる.また光合成装置に関連する遺伝子群の解析から,ヘリオバクテリアの反応中心はシアノバクテリアの光化学系Ⅰに最も近縁であるとされている.