カルビン[Calvin, M.]

  Calvin, Melvin, 1911-1997.米国ミネソタ州セントポールに生まれ,ミシガン鉱工業大学卒業,ミネソタ大学でPh.D.(化学,1935)を取得した.英国マンチェスター大学(M.Polanyi)でポルフィリン金属錯体の触媒作用を研究し, 1937年からカリフォルニア大学バークレー校化学科に在職した.当時,すでに同校ローレンス放射線研究所ではルーベンケーメンらが同位元素を用いて光合成研究を行い,半減期の長い放射性同位元素14Cも発見されていた(1939, 1941).しかし,ルーベンは実験事故で亡くなったので,同研究所の光合成炭素固定研究はカルビンにより再開された(1945).戦後,原子炉から多量に得られる14CO2を利用し,彼は内外から多数の研究者を集めて指導した.まず,彼とベンソンは光合成14CO2固定の初期産物として3-ホスホグリセリン酸を同定した.また, CO2受容体は中間代謝産物を経て回路により再生されると推定した.主に単細胞緑藻クロレラの懸濁液を用い,一部を短時間で熱アルコールに投入して反応を停止し, 14C産物の分離と同定にはペーパークロマト法とラジオオートグラフィーを併用した.糖リン酸など種々の中間代謝産物への14Cラベル出現の時間経過と各分子内の14C分布を詳しく解析して“光合成の炭素還元回路”が提案され(1954), 1956年に還元的ペントースリン酸回路(C3回路)として完成された.その後,C3回路の酵素がすべて生化学的に実証され,広範な植物や*化学無機栄養細菌を含む原核生物にもその存在が確認された.この業績によりカルビンはノーベル化学賞(1961)をはじめ,多くの著名な化学会賞を受賞した.後半生には,植物の水分解系を模した有機金属錯体による人工光合成系の開発を試み,あるいは石油代替となるテルペノイドなど植物の炭化水素生成系に注目してトウダイグサ科ホルトソウなどエネルギー植物の栽培農業を発案実施した.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:30