ゴールデンライス[Golden rice]

 ゴールデンライスは,本来カロテノイドを含まないイネの胚乳にβ-カロテンを産生するように、外来のカロテノイド遺伝子を導入した遺伝子組み換えイネである.発展途上国では今なおビタミンA欠乏症が広がっている.長期間におよぶビタミンA欠乏症は,回復不能の失明や死をもたらす大変深刻な問題である.一方,β-カロテンはヒトの体内でビタミンAに転換されるため,β-カロテン含量の高い食べ物を摂取することはビタミンA欠乏を防ぐために非常に有効である.しかし,とりわけ,南アジアや東アジアなどコメを主食とする地域では,コメの胚乳にβ-カロテン含量が少ないこと,また飢餓地域や難民にもビタミンA欠乏症が見られる.そこで開発されたのがゴールデンライスである.最初のゴールデンライスではスイセンのフィトエン合成酵素(PSY)とリコペンβ-シクラーゼ(LCY),細菌のフィトエン不飽和化酵素(CrtI)が導入されていたが,その後トウモロコシのフィトエン合成酵素に変えることにより,β-カロテンの蓄積量は飛躍的に増えることになった.イネの胚乳に含まれるβ-カロテンの蓄積量が多く,黄金色に見えることから,ゴールデンライスと名付けられた.これにより,1食分のゴールデンライスを食べることで子供の推奨摂取量の60%が摂取できると報告されている.しかしながら,遺伝子組み換え作物であるゴールデンライスに対する批判や反対意見も多く,長い間論争が繰り広げられており,現時点では流通するに至っていない.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:13