代表的なシクロフェオフォルビドエノールの一つ. C33H33N4O2,分子量517.3.クロロフィルaの誘導体でクロリン環構造が保存されているため鮮やかな緑色を呈する色素であるが,無蛍光性であり光増感反応を全く示さない.一般的な無錯体クロロフィルa誘導体であるフェオフォルビドaなどと比較して,赤色光の吸収極大は長波長側に20 nm強はどシフトしている.有機溶媒中でのQy帯(赤色吸収域)の吸収波長(モル吸光係数:M-1cm-1)は,tert-ブチルメチルエーテル:687.2 nm (3.12×104),アニソール:691.0 nm (31.7×104).光や酸素に対して不安定であるが,特に,溶液状態では酸素に対して非常に不安定である.アニソール中では特異的に安定化されることが知られている.はじめ海綿から発見され,海洋の堆積物や二枚貝の消化管への濃集が報告されていたが,嫌気条件下での分析法の確立により,海洋や湖沼などの水試料や堆積物試料から普遍的に検出されることが示された.クロロフィルaを産生する微細藻類が様々なプロティスト(原生生物)に捕食される過程で生じることが示されており,また,渦鞭毛植物の細胞からも検出されることが報告された.