光化学系Ⅱ複合体を構成するD1タンパク質の161番目のチロシン残基. YZと略記されることが多い.酸素発生系のマンガンクラスターからP680への電子移動を仲介する役割をもつ. D2タンパク質の161番目(シアノバクテリアおよびクラミドモナスでは160番目)のチロシンDと擬C2対称に位置するが,チロシンDがP680への副次的な電子移動反応を行うのに対し,チロシンZは光化学系Ⅱの主電子伝達経路を形成する. P680のラジカルカチオンによって数十ナノ秒の速度で酸化され,フェニル基のプロトンを解離して,中性ラジカルになる.その後,数十マイクロ秒から数ミリ秒でマンガンクラスターを酸化し,自らはプロトン化して元のチロシンに戻る.マンガンを除去した光化学系Ⅱ標品では,光照射下でチロシンZラジカルの電子常磁性共鳴(EPR)シグナルが容易に観測でき,そのシグナルはチロシンDのシグナルⅡsに対し,シグナルⅡfと呼ばれることがある.