電子伝達鎖上ではAと略称される.光合成の初期電荷分離反応は一次電子供与体と一次電子受容体の間で起こるが,この2つの分子の間に電荷分離の仲介役をするクロロフィル分子が位置している.これを一般にアクセサリークロロフィルと呼び,光化学系Ⅰ,Ⅱ,光合成細菌の反応中心などすべての反応中心に共通して存在している.光化学系Ⅰでは,電子伝達体配列の中心軸(P700とFXを結ぶ軸)に対して対称的な位置に2分子のクロロフィルaがP700とA0の間に存在しており,これが光化学系Ⅰアクセサリークロロフィルと呼ばれている.各々のMg原子は水分子と配位結合しており,この水分子はPsaAまたはPsaBのアスパラギンと水素結合している.AとA0のクロリン環はほぼ平行しており,クロリン環の最短距離は3.8Åであることから,Aの分光学的性質はA0とよく似ていると推定される. P700からの電子がAを経てA0に伝達されるとのはっきりした証拠はまだないが, P700における初期電荷分離反応が0.8ピコ秒で起こるとの結果が近年報告され,これはP700とAの間での電荷分離速度と推定されている.